「ファロールオンライン」の立ち上げ~持続可能な地域社会を目指して~
みらいの地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
現在、熊本県・天草市を主な拠点とし、“地域コーディネーター”として地方創生事業を行っている大矢。
今回は、2021年に天草でテレワークプラットフォーム「ファロールオンライン」を立ち上げた時のエピソードについてお聞きします。
そこには、テレワークの普及を通じて、テレワークで働く人々や、地域の発展を願う大矢の熱い想いがあるそうです。
早速インタビューしてみましょう。
「ファロールオンライン」 とは、どのようなプラットフォームでしょうか?
都市部の企業などから業務を受託し、登録しているメンバーがオンラインアシスタントとして、テレワークで業務支援に従事しています。「ファロールオンライン」では、育児や介護、地方在住など、時間や場所に制約があり、一般的な求人では接点のできない、働く意欲と高いスキルを持った人材がたくさん活躍しています!
なぜ、「ファロールオンライン」を立ち上げようと思ったのでしょうか?
前回のコラムでもお話しましたが、私が天草へと拠点を移した大きな理由の一つに、テレワークを普及することで、地方に雇用を創出し、地域の人口減少を緩やかにしたいという想いがありました。テレワーク普及のためには、デジタル人材の育成が必要だと考え、テレワーク入門セミナーやスキルアップ講座なども開催しました。ただ、いくらスキルをつけても、それを活かす場がなかったんです。
当時の天草には、テレワークを普及していく上での課題が色々とあったということですね。
そうですね。どうやってオンラインで働くということを当たり前にしていくか?と考えた時に、当然仕事が必要になってきますが、当時は営業体制だけでなく、地元の方々のデジタルスキルが十分でないことにより、オンラインで行うお仕事はほとんどありませんでした。
そこでオンラインプラットフォームを立ち上げ、全国の経験・スキルをもったメンバーさんたちと一緒に仕事をすることで、実務を通じて地方のワーカーさんのスキルも向上できるのではと考えたんです。
スキルを持った多くの人を集めることができるのは、オンラインならではですよね!
そうなんです。実際「ファロールオンライン」を立ち上げると、全国から高いスキルと意欲を持ったメンバーさんたちが集まってくれました。その方たちにマネージャーとして、お客様とのやりとりや、ビジネススキルやテレワークスキルが不足しているメンバーの育成を任せることができました。
はじめてテレワークを行う地元のワーカーさんも、マネージャーの存在があると、安心して業務にチャレンジすることができます。半年1年のうちに大きく成長するメンバーを見ていると、私が当初想い描いていた「安心して、はじめてテレワークに踏み出せる環境をつくる」ということが、形になってきているなと感じますね。
「ファロールオンライン」では現在、どのような方がご活躍されているのでしょうか?
立ち上げ当初から関わってくれているマネージャーはもちろん、私が天草ではじめて開催したテレワーク入門セミナーの受講者が、現在マネージャーやリーダーとして、新たなメンバーの育成やお客様とのやりとりを行ってくれています。当時はパソコンもほとんど触ったことがなかった方たちが、意欲的にスキルを付けていく姿をみると、すごく嬉しく思いますね。
現在は、天草在住の方を含む総勢300名ほどが在籍しており、子育て・介護中の方々や海外在住者なども活躍していますよ。
わずか3年ほどで大きな組織になったのですね! その秘訣はどこにあったのでしょう?
キャリアステップ制度を整備した点は大きかったと思います。地方では、昇給制度が整っていない企業も散見され、仕事で成果を出す喜びを感じたことがない人が多いと感じました。そこで7段階のキャリアステップを用意し、自身のスキルアップや頑張りに見合った報酬が得られる仕組みを構築したんです。
メンバーをとても大切に想っていらっしゃるのですね。
お客様と同じくらい、一緒に働く仲間を大切にする!と決めて「ファロールオンライン」を立ち上げました。お陰様で「地方で雇用を創出し、人口減少を緩やかにする」というファロールのコンセプトを理解し、応援してくださるお客様とお付き合いができていることも、結果的にメンバーを大切にすることにつながっていると感じます。
そうですね。「地方にいても首都圏のナショナルクライアントの仕事ができる」という点や、家族を大事にしながら自分のやりたいこともできることが影響しているのだと思いますが、メンバーのモチベーションは総じてとても高いと感じます。
さらに今後は、都市部の企業の仕事を通して自信をつけたメンバーが、地場産業の活性化にも貢献していくような流れが生み出せればと考えています。
都市部企業の仕事をすることが、地場産業の活性化につながるのですか?
「ファロールオンライン」の業務では、地方では携わる機会のない、都市部の企業の仕事を経験することができます。そこで得た最先端の技術やノウハウを、地元のメンバーが地元の企業へと還流していくことにより、地場産業が活性化し、業績が向上していくという流れですね。
都市部の企業の仕事を担うメンバーさんと、地場企業をつないでいくことで、地域の人材の力で、地域企業の業績向上を達成することができると考えています。そうなれば、私が目指している「持続可能な地域社会」の実現ができるーー。これを達成したいと思ったのも、「ファロールオンライン」を立ち上げた一つの要因なんですよね。
天草市でテレワークの普及を目指す取り組みは、雇用創出という面だけでなく、地域に住む人の力で、地域の企業や産業を活性化していくという「持続可能な地域社会」の実現にも寄与しているのですね。
ありがとうございます。
今回は、大矢がテレワークプラットフォーム「ファロールオンライン」を立ち上げた時のエピソードについて語っていただきました。
次回は、そんな大矢の心に「運命の日」として今も刻まれている、2021年3月26日の出来事についてお話いただきます。
お楽しみに!
企業誘致とテレワーク普及の両輪~人口減少を緩やかにするために~
みらいの地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
現在、熊本県・天草市を主な拠点とし、“地域コーディネーター”として地方創生事業を行っている大矢。前回までのコラムでは、地域に雇用を創出する取組みの一つである「企業誘致事業」について伺ってきましたが、今回からは、もう一つの事業の柱である「テレワークの普及」についてお聞きします。
そこには、安心して住み続けられる地域をつくりたいという、大矢の熱い想いがあるそうです。
早速インタビューしてみましょう。
改めて、熊本県・天草市では、どのような取り組みをされていますか?
「地方に雇用を創出することで、その地域の人口減少を緩やかにしたい」と考え、その成功モデルを天草市でつくるという想いのもと、地方創生事業を行っています。
大矢さんの考える「人口減少を緩やかにする」とは、具体的にどういったことでしょうか?
人口が減少する要因は、大きく2つあります。1つは出生数よりも死亡数が多いことによる「自然減」、もう1つは転入数よりも転出数が多いことによる「社会減」です。私は2つ目の要因である「社会減」による人口減少を少しでも改善したいと考えています。
人口の「社会減」にどのようにアプローチするのでしょうか?
地域によって多少の変動はありますが、地方における転出者の約6割が、「やりたい仕事がない」、もしくは「仕事があっても収入・賃金が低い」という理由で、その地を離れてしまっているのです。
都市部から企業誘致を行い「若者にとって魅力的な仕事を増やすこと」は雇用を創出する上で重要なことですが、同時に「世帯所得を増やしていく」ということも、人口減少を考える上でとても大切なことだと思っています。
例えば子育てをしていると、子どもの教育にお金がかかるようになり、ある程度の収入を確保する必要がでてきます。しかし、企業の業績が急激に伸びて、翌月から一家の稼ぎ手の給与が5~10万円も上がるかというと、なかなか現実的ではありませんよね。そこで、たとえば、子育てや介護などで、働きたくても働けない主婦の方々などが活躍できる環境があれば、結果的に世帯所得を増やすことができるのではないかと考えました。
子育てや介護などで制約がある方々が活躍できる環境とは?
地方では、一次産業や二次産業が中心の地域が多いので、職場に行って働く仕事が多く、子育てや介護との両立が大変な面があります。そこで短時間でも働けて、自宅などでも勤務ができる「テレワーク」という選択肢があれば、現在子育て中で収入のないママさんが、月5~10万の収入を得ることは可能ではないかと考えました。そうなると経済的な理由で引っ越しをすることがなくなり、人口減少も緩やかにできる一因になると考えています。
地方にテレワークが普及することで、そういったメリットがあるのですね。
そうですね。ただ、地方にテレワークを普及させることは、決して簡単なことではありません。現在当社では、テレワークプラットフォーム「ファロールオンライン」を運営し、たくさんのテレワーカーさんに活躍いただいていますが、立ち上げ当初は色々と課題もありました。案件を受注するにあたり、営業体制や、登録メンバーのデジタルスキルが十分でなかった点などですね。
テレワークプラットフォームを軌道に乗せるためには、適切な量のお仕事と適切なスキルを持った人材が不可欠ということですね。
はい、どちらも段階的に整えていく必要がありました。案件については、私の想いに共感してくださった企業様から、徐々に依頼をいただくことができるようになっていきましたが、登録メンバーのデジタルスキル向上にあたっては、人材育成の仕組みが必要でした。具体的には、テレワークに興味のある市民の方々を対象に、セミナーや講座を開催しました。それらを受講された方たちが、「ファロールオンライン」で中心メンバーとして活躍されるようになり、結果として、とても良いモデルケースになっていったのです。
大矢さんの想いが、段々と形になっていったのですね!
天草市の人口が緩やかになる、その一助になれていたら嬉しいです。また進出企業にとっても、進出先の地域にテレワークが普及していることはメリットが大きいんです。
当社で地方進出のご支援をさせていただいているIT企業の多くは、人材不足に悩んでおられます。特にIT企業の多い首都圏では採用が過熱しており、即戦力となるエンジニア採用は特に難しく、未経験者の採用も少なくありません。同じ未経験を採用するのであれば、地方に拠点をつくり、長く勤務してくれる方を採用したいと考える企業は多いです。テレワークスキルを持ったワーカーさんがその地にいることで、現地での採用ニーズを満たすことができるんです。
テレワークが普及することは、進出企業のニーズも満たす場合があるのですね!
そうなんです。テレワークを地方に普及させることで、企業誘致の促進に繋がり、最終的にはその地域で雇用が生まれ、少しでも人口減少を食い止めることができればと考えています。
人口減少の緩和を目指すみらいの地方創生事業では、企業誘致とテレワークの普及が車の両輪のように、どちらも欠かすことができない大切な取り組みとなっているのですね。
ありがとうございます。
今回は、みらいが考える人口減少対策において、テレワークの普及が必要な理由について語っていただきました。
次回は、天草でテレワークプラットフォーム「ファロールオンライン」を立ち上げた時のエピソードについてお話いただきます。
お楽しみに!
とにかく会いに行く~地域コーディネーターへの道~
みらいの地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
現在、熊本県・天草市を主な拠点とし、進出企業と地域との橋渡し役になるべく活動している大矢。今回は、ほとんど知り合いもいない地で、地域の方々とどのように信頼関係を構築し、地方創生事業への理解を深めていったのか?についてお聞きします。
そこには、大矢が地域コーディネーターになるまでの試行錯誤の日々の中で得た、大切な気づきがあるそうです。
早速インタビューしてみましょう。
天草市に拠点を移されて4年目を迎えるそうですが、これまでどんな活動を?
「地方自治体の希望となるモデルを、日本の端・天草からつくろう」という想いのもと、企業誘致とテレワーク普及という2つの軸で、地方創生事業を行っています。
具体的には、誘致した企業がその地に定着できるようサポートしたり、テレワークで働く人を増やすための講座を開催し、テレワークセンターを運営したりと、天草で雇用を創出し人口減少を緩やかにする取り組みを行っています。
温暖な気候、かつ海に面している天草は、とても食が豊かなところです。住んでいる皆さんも寛容な方が多いと感じています。最初はほとんど知り合いがいない状態でしたが、今ではいろいろな方が声をかけてくれるようになりました。
地元のお祭りの実行委員までやらせていただいて、「短期間でこんなにも知り合いがいるの!?」と、よく驚かれます(笑)。
すでにたくさんの方との繋がりを作られているのですね!その秘訣は?
天草の方々の人の良さが大きな理由ですね。また、私の育ってきた環境も影響しているのかもしれません。
小さい頃から野球をやっていて、キャプテンとしてチームをまとめていたので、チーム作りの経験は活きたように思います。また東京出身ではあるものの、両親の故郷は新潟で、都会と地方のそれぞれの魅力を感じていた点や、父が飲食店を経営していたので、老若男女問わずいろいろな方とコミュニケーションをとれていた点も、この事業をする上では重要な要素だったのかもしれません。
ただ、縁もゆかりもなかった天草の地で、ゼロから事業を立ち上げたので「やるしかない!」というところも大きかったですね。そして、事業のスタートアップで必死に動きまわる日々でしたが、慌ただしい中でも「とにかく会いに行く」という姿勢は崩さなかったですね。
天草で事業をされている方など、地元の方々にひたすら会いにいきました。
当初から私が天草でやりたいことの1つに「誘致した企業を地場企業にすること」があります。そのためには、誘致した企業と地域の方をつなぐ「地域コーディネーター」という役割が必要だと考えていたのですが、それならまずは、私自身が地元の方と信頼関係を築かなければと思ったんです。
地域のことも、その地に住む方のことも分からなければ、進出企業と地域をつなげることはできませんよね。
地元の方と信頼関係を築くのは、難しい面もありそうですが?
もちろん最初からうまくいったわけではありません。地域を活性化するために自治体が予算をかけて行うのが企業誘致事業です。しかし、地元事業者の方が「雇用を奪われるのではないか?」「本当に、まちのためになるのか?」と不信感を抱かれることもあります。
そこでまずは、地元の方が何を必要としているのかを、とにかくお聞きしました。すると、徐々にお互いのことが理解でき、企業誘致の先にある未来の話ができるようになってきました。そして、地域の方から相談や連絡をいただくようになったんです。
その時はすごくうれしかったですね。私は「良い企業誘致をすることは、天草の30年後、50年後を作ることになる」と伝えていたのですが、次第に町全体が地方創生事業に理解を示してくれていると感じるようになりました。
視察ツアーなどで初めて訪れた企業の方も、「どうしてこんなに、天草の方は温かく受け入れてくれるんですか?」と感心されるほどです。
この天草での経験から、とにかく多くの地域の方にお会いし、話を伺うことは、地方創生事業を行う上でとても重要なことだと考えています。
進出企業にとっても、地域の方の理解があるのは心強いことですよね。
そうですね。進出企業にとっても地方に進出することは、多少なり覚悟を伴うものです。進出した地域と良好な関係ができれば、地元の産業や企業とタッグを組み、地域を活性化できるような事業が生まれるかもしれません。
そうなると、「あの会社が来てくれて本当によくなった」と、地域にとっても、進出企業にとっても、良い企業誘致になると思っています。そのためにも、まず私が地域のことを知り、地域の方々と親睦を深めることで、進出した企業がその地に溶けこみやすくなるのかなと考えています。
地域と進出企業、双方にとって良い企業誘致になることが大切なんですね。
そうですね。私が目指す「誘致した企業を地場企業にすること」を実現するためにも、形だけの企業誘致はしないと決めています。
「地場の企業や、天草が、今後どうなっていきたいのか?」「どんな企業が誘致できたら地域にとって良いのか?」を地域の方々とともに考え、進出企業を温かく迎える機運を醸成し、一つのチームとして地方創生を進めていく。それが、私の地域コーディネーターとしての役割だと思っています。
天草での経験から、地域コーディネーターとしての“あり方”を学ばれたのですね。
ありがとうございます。
今回は、進出企業と地域との橋渡し役になるべく天草へ拠点を移した大矢が、地域の方々とどのように信頼関係を築き、地域コーディネーターとしての活動をスタートしていったのかについて、語っていただきました。
次回は、そんな大矢が、天草でテレワーク普及のためのプラットフォームを立ち上げることになったエピソードについて、お話いただきます。
お楽しみに!