『地方で働く』がスタンダードになる時代 ― 採用戦略の転換点をどう捉えるか

都市部を中心とした人材採用は、年々難しくなっています。求人を出しても応募が集まらない、採用コストだけが膨らむ、ようやく内定を出しても辞退される。こうした課題に直面している企業は少なくなくありません。一方で、働く側の意識は確実に変化しています。コロナ禍を経てリモートワークが普及したことで、働き方や働く場所の柔軟性を重視する人材が増え、都市部での就職にこだわらない働き手も増えています。本記事では、人材確保の観点から、企業が地方に目を向ける必要性について整理していきます。

 

都市部だけでの人材採用が限界に近づいている理由 

都市部の採用困難化の根本的な原因として、労働人口の減少は無視できません。若年が年々減少しており、限られた人材を多くの企業が取り合う構図になります。その結果、給与や福利厚生、知名度といった条件競争に陥りやすく、体力のある一部企業に人材が集中しがちになります。 

また、「通勤可能圏内」を前提とした採用設計そのものが、母集団を狭めている側面もあります。通勤可能圏に住んでいる、あるいは移住できる人材だけを対象にしている限り、採用可能な人数には明確な上限が生まれます。母集団が少ないのはもとより、さらに採用できる範囲を狭めていることもあるでしょう。 

採用が難しくなっている背景には、従来の採用設計そのものがすでに時代と合わなくなりつつあるという実情があるのです。都市部だけに依存した採用モデルは、今後ますますリスクが高まっていくと考えられます。

コロナ禍で露呈した「出社前提モデル」の脆弱性 

コロナ禍は、多くの企業にとって働き方を根本的に見直すきっかけとなりました。これまで当然とされてきた出社前提の業務体制が、非常時には脆弱であることが明らかになったためです。オフィスに人が集まれないだけで業務が滞る、意思決定が遅れるといった事例が多くあり、業績が大きく落ち込んだり、倒産や廃業に追い込まれた企業も多くありました。 

一方で、急遽リモート勤務の体制を整備したことで、コロナ渦を生き延びた企業があることも確かです。業務内容にもよりますが、出社していること自体より、業務プロセスや情報共有の仕組みが整っているかが成果に直結することが実証されたのです。 

出社前提の働き方が崩れたことで、都市部にオフィスを構えることの優位性も相対的に低くなりました。これは企業が採用人材を都市部に限定する必然性も弱まったことも意味します。 

働き手はすでに柔軟性を企業選択の軸にしている 

コロナ渦を経て、働き手の意識は大きく変化しました。給与や企業規模、知名度といった従来の判断軸に加え、「どのような働き方ができるのか」が企業選択の重要な要素になっています。特にリモート勤務の可否や、勤務地の自由度は、求人情報を見る際の前提条件になりつつあります。 

コロナ禍をきっかけに、多くの人が「必ずしも毎日出社しなくても仕事は成立する」と経験しました。その結果、出社を強く求められる会社や勤務地を固定される会社を、早々に就職活動の選択肢から除外する働き手が増えているのです。 

注目すべきなのは、こうした変化が一部の人材に限った話ではないということです。今や新卒採用だけでなく、転職市場でも働き方の柔軟性は企業への評価に影響します。柔軟な働き方を認める企業に人材が集まり、そうでない企業からは人が離れていく流れは、今後さらに加速していくでしょう。

地方に目を向けることが採用戦略になる理由 

都市部での採用が難しくなる一方で、地方には十分なスキルや経験を持ちながら、勤務地の制約によって就職先の選択肢が限られている人材が一定数存在します。家族の事情や生活環境の理由から都市部で働けないものの、リモートであれば問題なく業務を遂行できる人材がいるのです。 

勤務地の制約を外すことができれば、採用の候補者は大きくなります。このために必ずしも地方に拠点を新設することや、大規模な投資を行う必要はありません。あくまで採用の視野を広げ、従来の採用条件を少し見直すだけで、これまで出会えなかった人材と接点を持てる可能性が生まれるのです。 

就職先が限定されやすい地方在住の人材にとって、フルリモートや一部出社といった働き方は十分に魅力的です。都市部と同等の仕事に携われる機会は限られているため、働き方の柔軟性を提示できる企業は働き手とWin-Winな関係性を築ける可能性があります。 

ここで重要なのは、地方と都市部の人材に格差を設けないことです。都市部と地方で人材の能力に本質的な差があるわけではなく、単にこれまで都市部へのアクセスがあったか否かのみです。地方に目を向けることは、採用の幅を広げるうえで合理的な選択だと言えるでしょう。 

それでも地方活用が進まない企業の共通課題 

地方に目を向けることの必要性を理解しつつも、実際の採用活動に踏み切れない企業も多いでしょう。その背景には、いくつかの共通点があります。 

まず挙げられるのが採用後のマネジメントに対する不安です。直接顔を合わせないと業務の進捗が把握できない、適切に評価できないといった懸念は、現在でも根強く残っています。こうした不安の多くは、リモートそのものが原因というより、業務プロセスや評価基準が曖昧なままになっていることが要因です。出社前提で暗黙的に回っていた管理手法を改善する必要があります。 

オンボーディングの設計不足も障壁になります。地方在住者を例外的に扱い、既存の仕組みで無理にやりくりしようとすると、孤立や定着率低下につながります。働く場所が異なることを前提に、業務フローやコミュニケーションの設計を見直さなければ、地方人材を活かすことが難しくなります。 

一部の職種や人材だけに柔軟な働き方を認める制度設計も、社内で軋轢を生む要因です。社内に不公平感が生まれると、制度そのものへの反発が強まり、結果的に地方人材の活用が進まなくなります。地方人材の活用は個別対応ではなく、社内の全体設計として考える必要があるのです。

これからの企業に求められる採用・働き方の再設計 

少子高齢化と働き手の価値観の変化を加味して今後の採用環境を考えると、働く場所を固定した条件のままでは、人材確保がさらに難しくなる可能性があります。地方に目を向けるかどうかは、理想論ではなく、採用戦略の再設計として捉える必要があります。 

まず求められるのは、業務を場所に依存しない形で整理することです。出社が必要な業務と、リモートでも成立する業務を切り分けることで、業務に支障がない範囲で勤務地の制約を緩めることが可能になります。 

成果や役割に基づいた評価基準を整えることも重要です。働いている姿ではなく、アウトプットで評価できる仕組みがなければ、リモートや地方在住の人材を適切に活かすことはできません。評価基準が明確になれば、マネジメント側の不安も軽減されます。 

地方で働く人材を特別扱いしない運用も欠かせません。一部の例外として対応するのではなく、最初から多様な働き方が存在する前提で制度を設計することが組織の安定につながります。 

これからの社会で、採用と働き方は切り離せない関係にあります。働き方を柔軟に設計できる企業ほど、採用においても選択肢が広がります。地方に目を向けることは、変化に対応するための一つの手段として、今後ますます重要になっていくでしょう。 

まとめ|地方に目を向けることで、企業の可能性も広げる 

都市部に拠点を置く企業にとって、人材採用を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。少子化や採用競争の激化により、従来と同じ採用手法では成果が出にくくなっているのが現実です。    

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    天草発、地域づくりの連鎖が動き出す~メディア掲載がつなぐご縁~

    「日本の端から日本を元気に」の地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。

    現在、熊本県・天草市を主な拠点とし、“地域コーディネーター”として持続可能な地域社会づくりに取り組む大矢。

    今回は、そうした取り組みがメディアを通じて伝わったことで、どのような出会いや連鎖が生まれてきたのかについて伺います。

    早速インタビューしてみましょう。

    天草での取り組みが周囲の関心を集め始めたのは、どのような出来事からでしたか。

    天草に拠点を移してまだ一年も経っていない頃に、熊本の地元紙に取り上げられたことがありました。
    子育て中のママたちがテレワークで活躍している様子を紹介していただいたのですが、それが「天草でもこんな働き方が広がりつつあるんだ」と知ってもらう最初のきっかけだったと思います。

    地元紙から取材があったのですね。

    その後も、天草での企業誘致の取り組みが進んでいく中で、再び取材していただく機会がありました。
    県内の知り合いからの反響も多かったですし、取材してくださった記者さんが地方出身の方だったのですが、後日コラムで「地方だから何もできないと決めつけているのは自分ではないか」と、ご自身の体験と重ね合わせて書いてくださったのも、とても印象に残っています。

    全国紙での密着取材もあったと伺いました。

    「なぜ天草に企業が集まってくるのか?」を知りたいと、全国紙の記者さんが視察ツアーに3日間同行してくださり、その様子を紹介していただきました。
    補助金や条件ではなく、「天草では人の魅力が、補助金以上の資源になっている」と、私が企業誘致で大切にしている想いを感じ取ってくださったことが、とても嬉しかったですね。

    「人の魅力が企業誘致の鍵になっている」点が印象的です。

    自治体の立場としては、「補助金を充実させないと進出してもらえないのでは?」といったように、条件面の整備に意識が向きがちなところがあると思います。でも本当に大切なのは、「その地域にしかないオンリーワンの魅力」をどう伝えるか
    天草での事例をもとに、私の大切にしていることを紹介していただいたことで、理解者が増えたと感じています。

    天草での取り組みが、自治体の方々にも届き始めたのは、どのようなきっかけからだったのでしょうか。

    行政向け専門誌『ジチタイワークス』(2023年5月号)に、天草市役所の担当職員さんとの対談を掲載していただいたんです。この雑誌は、全国の自治体に配布されるので、天草での取り組みを広く知っていただくきっかけになりました。

    そうやって取り組みがだんだんと認められてきたのですね。

    さらに、別の専門誌『中小企業と組合』(2024年4月号)でも、総務省の実証事業への参加を通じて生まれたご縁がきっかけで、天草でのテレワーク普及と企業誘致による地域活性化の事例を特集していただきました。
    実証事業でご一緒した方が、当社が運営する天草のテレワークセンター「あまスタ★ファロール」まで実際に来られて「この取り組みはもっと多くの人に知ってもらうべきだ」と記事にしてくださったんです。

    それは大きな励みになりますね。

    直近だと、教育系メディア『先端教育』(2025年9月号)での、熊本の「教育×地域創生」をテーマにした特集の中で、大学の学長や教育委員長など、教育界のキーパーソンに並び、民間から取り上げていただきました。
    天草での取り組みが、教育の文脈でも評価され始めていると感じた出来事でした。

    メディア掲載は、大矢さんにとってどのような意味を持っていますか。

    本当にありがたいですね。単純に「新聞や雑誌に載って嬉しい」という話ではないんです。
    記事をご覧いただいて、「話を聞かせてほしい」「視察に行ってみたい」と連絡をくださる自治体の方は、入口から“志”が近いことが多いんです。この先に描く未来を実現していく上で、同じ志をもつ仲間との出会いは必要不可欠です。
    その意味で、メディアに取り上げていただくことは、「同じ方向を目指す仲間と出会うための接点」になっているのです。

    なるほど。そうした出会いが積み重なることで、取り組み自体も広がっていくわけですね。

    僕が天草に来たのは、「天草で良いモデルをつくって、それを全国の地方が希望にできるようにしたい」という思いがあったからなんです。
    まだまだ道半ばですが、天草モデルを発信してくださるメディアの存在は、本当に心強く、感謝の気持ちでいっぱいです。
    そして、天草から勇気のバトンを受け取った様々な地域が、並行して動き出し、それぞれの個性を活かして切磋琢磨することが、強い地方を生み出す原動力になっていくはずです。

    天草での事例を伝え続けることで、共感する自治体や仲間が少しずつ増えていく――。
    メディア掲載は単なる「露出」ではなく、次の地域へとバトンを渡していくための、大切な入口であることが伝わってきました。

    今回は、天草での取り組みがメディアを通じて伝わる中で、思いがけない出会いや、その後の連鎖がどのように生まれていったのかについて語っていただきました。
    次回は、そんな様々なご縁をきっかけとして、全国に広がる支援先についてお話いただきます。
    お楽しみに!

    サテライトオフィスの代表的な種類を比較  専用型・共有型の違い

    働き方改革やテレワークの浸透で、従業員が柔軟に働ける環境づくりが企業の重要課題となっています。中でも注目を集めているのが「サテライトオフィス」の導入です。しかし一口にサテライトオフィスといっても、その形態にはいくつか種類があり、用途や目的に応じた選定が必要です。 
     

    本記事では、代表的な2つのタイプ「専用型」と「共有型」について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しながら、どんな企業にどちらが向いているのかを例を交えながら詳しく解説します。 

    サテライトオフィスとは? 

    サテライトオフィスとは、本社や主要拠点とは別の場所に設けられる小規模な業務拠点のことを指します。社員が本社に出社せずとも業務が行えるようにすることで、通勤・住居選びの負担軽減やワークライフバランスの向上を実現できる点が注目されています。 

    導入目的は企業によってさまざまですが、主に以下のような活用が一般的です。 

    近年は働き方改革の推進に加え、感染症対策や人材確保、地方創生の観点からも、サテライトオフィスの導入を検討する企業が増えています。ただし、いくつかの形態があるため、導入にあたっては事前にしっかりと検討する必要があります。 

    専用型サテライトオフィスの特徴 

    専用型サテライトオフィスとは、企業が自社専用に設ける業務拠点のことです。物件をレンタルまたは購入し、内装や設備、ITインフラまで自由に構築できるため、自社の業務内容や文化に合わせた空間づくりが可能です。 

    メリット 

    デメリット 

    専用型が適している企業 

    以下のような条件に当てはまる企業には、専用型のサテライトオフィスが向いています。 

    共有型サテライトオフィスの特徴 

    共有型サテライトオフィスとは、複数の企業や個人が同じ施設内のスペースを共用する形態のオフィスです。コワーキングスペースやレンタルオフィス、シェアオフィスなどがこれに該当し、必要なときに必要な分だけ利用できる柔軟性が魅力です。 

    メリット 

    デメリット 

    共有型が適している企業 

    次のような条件に合致する企業や部門には、共有型サテライトオフィスが向いています。 

    企業はどちらを選ぶべきか? 

    専用型と共有型のサテライトオフィスは、それぞれ一長一短であるため、自社の業務特性や人事状況に合わせた形態を選択する必要があります。 

    以下に、両者の特徴を簡潔にまとめた比較表を示します。 

    比較項目 専用型サテライトオフィス 共有型サテライトオフィス 
    セキュリティ 高い(自社専用) やや低い(他社と共用) 
    初期コスト 高い 低い 
    柔軟性 低い(固定契約) 高い(短期・少人数に対応) 
    空間の自由度 高い(レイアウトを自由に設計) 低い(既存設備を利用) 
    管理・運営負担 自社で対応が必要 施設側が対応 
    向いている企業 長期利用、セキュリティ重視 短期利用、コスト重視 

    セキュリティや長期的な運用を重視する企業には専用型が、初期費用を抑えつつフレキシブルな運用を求める企業には共有型が適しています。「自社がサテライトオフィスに何を求めるのか」を明確にしたうえで判断することが重要です。 

    まとめ|自社の状況にあったサテライトオフィスを 

    サテライトオフィスは、従業員の多様な働き方を支援し、企業の生産性向上や人材確保に貢献する手段です。専用型共有型の代表的な2タイプがあり、それぞれに異なる特徴があります。 

    サテライトオフィスを効果的に活用するに、自社の働き方や業務内容、導入目的を明確にしたうえで、最適なタイプを選びましょう。 

    特に地方拠点設置においては、イニシャルコストを抑える共有型でスタートして、採用ができたり事業が動き出したタイミングで、専用型に転換する事例が多く見受けられます。最小のコストで地方拠点=住所を得ることが、地方進出のハードルを下げるのではないでしょうか。 

    自社に合う拠点づくりを検討したい企業様は、Go地方の問い合わせフォームからご相談ください。 目的の整理から候補地域の比較まで、分かりやすくサポートします。 

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