みらいの地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
今回は、大矢が地方に目を向けるきっかけとなった、山口県岩国市での運命的な出会いについて、お聞きします。
岩国市へはいつ頃、何をしに行かれたのですか?
2020年2月、コロナ禍で緊急事態宣言が発令される2か月前ですね。当時は別の会社に勤めていて、テレワークを推進する事業に携わっていました。会社に岩国市視察ツアーの案内が届いたことをきっかけに、ツアー参加者として現地に行きました。
視察ツアーとは、どのようなツアーだったのでしょう?
都内の企業が複数社招かれていて、1日目は自治体各課とのミーティングと懇親会、2日目は市内観光が予定に組まれていました。ミーティングでは、各課による取り組み発表があり、参加企業と意見交換をする機会が設けられていました。
この企画のテーマとしては「人口減少対策」があり、都市部の企業の視点で岩国の良いところ、悪いところを発見し、今後の事業に活かしていきたいといった内容でした。ちなみに人口減少率でいうと、全国平均は年間約0.5%なのに対し、当時の岩国市は年間1.0%を少し超えたぐらいでしたね。
自治体各課と民間企業による意見交換とは、画期的ですね。
岩国市には米軍基地があることもあって、その予算を活用して、子育て支援や公園・病院などの設備もすごく充実しているんですよね。一見しただけでは、人口減少によって産業が衰退したり、活力が失われていったりする感覚を持てないかもしれません。外からの意見を聞くことで、そこに目を向けようという意図があったように感じました。私にとっては初めて接した自治体事業でしたが、職員の方々の地域に対する熱心な姿勢に触れることで、これまで考えもしなかった課題意識を持つことができました。
そのような背景があったのですね。そもそも、なぜテレワークを推進する会社が人口減少についての意見交換の場に招待されたのですか?
人口の流出を緩やかにするためには雇用創出が不可欠です。地域に雇用を生む取り組みとして、企業誘致と並んで注目されるのが、地元で働くことを可能にするテレワークの普及なんですよね。それで、テレワークの専門家としてご招待いただいたんです。
なるほど、そうでしたか。ミーティングで発表された、岩国市各課の取り組みについては、どのように感じましたか?
職員の皆さんが、岩国のことを想っていらっしゃることがすごく伝わってきました。自治体と企業という異なる立場の参加者が意見を交わすことで、双方にとって新しい気づきがあったのではと思います。
岩国市はどのようなところでしたか?
ツアー2日目には、世界遺産を目指している日本三名橋のひとつ「錦帯橋」など、岩国の色々なところを見て回りました。有名な「獺祭」の酒蔵へもお伺いし、責任者の方と意見交換をさせていただきました。新幹線も空港もあって、有名な観光スポットや豊かな自然もあるし、公共施設は充実をしているし、岩国は本当に素晴らしいところだなと思いました。逆に言うと、こんなに恵まれた地域ですら悩んでいるんだと考えさせられましたね。
帰りの新幹線の中で「岩国がこれだけ悩んでいるんだったら、他の地方はもっと悩んでいるのでは?」「もしかしたら、テレワークを世の中に広めることで、もっと多くの地方のお役に立てるのでは?」と思いました。
岩国視察が地方創生事業立ち上げの背景にあるのですね。
はい!特に視察ツアーでの市職員の方々との出会いが大きかったですね。令和4年度からは岩国市への企業誘致を受託事業者としてご支援させていただくようになり、結果として複数のIT企業を誘致することができました。きっかけを与えてくれた岩国市に少しだけ恩返しができたかな・・・というのが今の心境です。
公民連携でまちづくりを推進している素晴らしい事例ですね。
進出企業さんがまちに馴染んでいくことも、テレワークが普及して子育てママさんが働けるようになることも、自治体と民間企業が気持ちをひとつにすることで、すごく促進されるんですよね。初めて自治体と接する機会となった岩国市でそのことを経験できたことは、私にとって本当にラッキーなことだったと思っています。
お互いに心がひとつになっているからこそ推進できる、まちづくりですね。
今回は、大矢が地方創生事業に一歩踏み出すきっかけとなった、岩国市でのエピソードについてお話いただきました。
次回は、そんな大矢が、初めて地方自治体と仕事をした時の話をお聞きします。
お楽しみに!