みらいの地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
現在、熊本県・天草市を主な拠点とし、進出企業と地域との橋渡し役になるべく活動している大矢。今回は、ほとんど知り合いもいない地で、地域の方々とどのように信頼関係を構築し、地方創生事業への理解を深めていったのか?についてお聞きします。
そこには、大矢が地域コーディネーターになるまでの試行錯誤の日々の中で得た、大切な気づきがあるそうです。
早速インタビューしてみましょう。
天草市に拠点を移されて4年目を迎えるそうですが、これまでどんな活動を?
「地方自治体の希望となるモデルを、日本の端・天草からつくろう」という想いのもと、企業誘致とテレワーク普及という2つの軸で、地方創生事業を行っています。
具体的には、誘致した企業がその地に定着できるようサポートしたり、テレワークで働く人を増やすための講座を開催し、テレワークセンターを運営したりと、天草で雇用を創出し人口減少を緩やかにする取り組みを行っています。
天草での生活はいかがですか?
温暖な気候、かつ海に面している天草は、とても食が豊かなところです。住んでいる皆さんも寛容な方が多いと感じています。最初はほとんど知り合いがいない状態でしたが、今ではいろいろな方が声をかけてくれるようになりました。
地元のお祭りの実行委員までやらせていただいて、「短期間でこんなにも知り合いがいるの!?」と、よく驚かれます(笑)。
すでにたくさんの方との繋がりを作られているのですね!その秘訣は?
天草の方々の人の良さが大きな理由ですね。また、私の育ってきた環境も影響しているのかもしれません。
小さい頃から野球をやっていて、キャプテンとしてチームをまとめていたので、チーム作りの経験は活きたように思います。また東京出身ではあるものの、両親の故郷は新潟で、都会と地方のそれぞれの魅力を感じていた点や、父が飲食店を経営していたので、老若男女問わずいろいろな方とコミュニケーションをとれていた点も、この事業をする上では重要な要素だったのかもしれません。
そういったバックグラウンドをお持ちなんですね。
ただ、縁もゆかりもなかった天草の地で、ゼロから事業を立ち上げたので「やるしかない!」というところも大きかったですね。そして、事業のスタートアップで必死に動きまわる日々でしたが、慌ただしい中でも「とにかく会いに行く」という姿勢は崩さなかったですね。
「とにかく会いに行く」とは?
天草で事業をされている方など、地元の方々にひたすら会いにいきました。
当初から私が天草でやりたいことの1つに「誘致した企業を地場企業にすること」があります。そのためには、誘致した企業と地域の方をつなぐ「地域コーディネーター」という役割が必要だと考えていたのですが、それならまずは、私自身が地元の方と信頼関係を築かなければと思ったんです。
地域のことも、その地に住む方のことも分からなければ、進出企業と地域をつなげることはできませんよね。
地元の方と信頼関係を築くのは、難しい面もありそうですが?
もちろん最初からうまくいったわけではありません。地域を活性化するために自治体が予算をかけて行うのが企業誘致事業です。しかし、地元事業者の方が「雇用を奪われるのではないか?」「本当に、まちのためになるのか?」と不信感を抱かれることもあります。
そこでまずは、地元の方が何を必要としているのかを、とにかくお聞きしました。すると、徐々にお互いのことが理解でき、企業誘致の先にある未来の話ができるようになってきました。そして、地域の方から相談や連絡をいただくようになったんです。
風向きがかわったような感じですね!
その時はすごくうれしかったですね。私は「良い企業誘致をすることは、天草の30年後、50年後を作ることになる」と伝えていたのですが、次第に町全体が地方創生事業に理解を示してくれていると感じるようになりました。
視察ツアーなどで初めて訪れた企業の方も、「どうしてこんなに、天草の方は温かく受け入れてくれるんですか?」と感心されるほどです。
この天草での経験から、とにかく多くの地域の方にお会いし、話を伺うことは、地方創生事業を行う上でとても重要なことだと考えています。
進出企業にとっても、地域の方の理解があるのは心強いことですよね。
そうですね。進出企業にとっても地方に進出することは、多少なり覚悟を伴うものです。進出した地域と良好な関係ができれば、地元の産業や企業とタッグを組み、地域を活性化できるような事業が生まれるかもしれません。
そうなると、「あの会社が来てくれて本当によくなった」と、地域にとっても、進出企業にとっても、良い企業誘致になると思っています。そのためにも、まず私が地域のことを知り、地域の方々と親睦を深めることで、進出した企業がその地に溶けこみやすくなるのかなと考えています。
地域と進出企業、双方にとって良い企業誘致になることが大切なんですね。
そうですね。私が目指す「誘致した企業を地場企業にすること」を実現するためにも、形だけの企業誘致はしないと決めています。
「地場の企業や、天草が、今後どうなっていきたいのか?」「どんな企業が誘致できたら地域にとって良いのか?」を地域の方々とともに考え、進出企業を温かく迎える機運を醸成し、一つのチームとして地方創生を進めていく。それが、私の地域コーディネーターとしての役割だと思っています。
天草での経験から、地域コーディネーターとしての“あり方”を学ばれたのですね。
ありがとうございます。
今回は、進出企業と地域との橋渡し役になるべく天草へ拠点を移した大矢が、地域の方々とどのように信頼関係を築き、地域コーディネーターとしての活動をスタートしていったのかについて、語っていただきました。
次回は、そんな大矢が、天草でテレワーク普及のためのプラットフォームを立ち上げることになったエピソードについて、お話いただきます。
お楽しみに!