【鹿児島県・南九州市】武家屋敷と共に挑戦する地方創生 

~「よそ者」だからこそ見えた地域の可能性~

別名「薩摩富士」とも呼ばれる開聞岳を南九州市から望む

NHホテルマネジメント株式会社(通称:NHHM)は、宿泊施設の運営や客室清掃などを手がける「運営受託事業」、後継者がいない飲食店などの運営を引き受ける「後継ぎ継承事業」、地方でビジネスを生み出し、かつ長生きさせることを目指す「地方創生事業」の3つの事業を軸に、独自のノウハウや視点から観光産業を支える会社です。
今回は、そんなNHホテルマネジメント株式会社が2023年3月に鹿児島県南九州市に進出された経緯について、代表取締役の芳村 英郎様にお話を伺いました。

NHホテルマネジメント株式会社

代表取締役 芳村 英郎様

コロナ禍で売上7割減をきっかけに、地方進出を決意 

まずは地方進出を検討されたきっかけを教えていただけますか?

コロナ禍により弊社の事業は大きな打撃を受けました。売り上げは約7割減となり、この先、東京だけでやっていけるのだろうか?と危機感を覚え、地方での事業に関心を抱いたのがきっかけです。コロナ以前から、東京だけではなくニセコや新潟といった地域でも事業を展開してきましたが、それらは全て受託業務でした。なので、地方創生を掲げて自分たちで一から何かを生み出すような仕事に挑戦してみたかったんです。また、以前から「武家屋敷を借りたい」という漠然とした願望もあったので、それが実現できる地域を探していました。

南九州市のことはどのように知ったのでしょうか?

地方での働き方やビジネスの可能性についてリサーチしていたところ、南九州市に関するみらいさんの記事を見つけ、非常に惹かれるものがありました。実は私自身、鹿児島にはサラリーマン時代に営業で足繁く通った経験があり、愛着をもっているんです。芋焼酎も大好きで、毎晩のように飲んでいます(笑)そのような経緯から、迷わずみらいさんに視察ツアーの手配をお願いしました。

視察ツアーをきっかけに広がった人脈と可能性 

NHホテルマネジメント社が継承することになった西郷恵一郎邸

 視察ツアーを通して、南九州市の印象は変わりましたか?

ネガティブな意味でのギャップは全くなかったです。温暖な気候、温泉、青い海...。私がずっと追い求めていた理想通りの場所でした。一方で、元々鹿児島には馴染みがありましたが、南九州という地方特有の風土については無知だったので、実際に行ってみると多くの発見がありましたね。視察に行くまでは、「日本一のお茶生産量を誇る町」だということすら知りませんでした。西郷恵一郎邸という武家屋敷との出会いも忘れがたいです。とても素晴らしいお屋敷なのに、利用者がいないとのことだったので、ぜひ弊社で引き継がせていただきたいと思いました。
それに加えて視察時に印象深かったのは、活用できていない資源が多いということでした。地元の方々にとってみれば、それらは昔からある当たり前の光景にすぎないかもしれませんが、外からやってきた人間からすると、とにかく発見の連続でした。もっと世界に認知してもらいたい魅力や面白さ、ビジネスに繋がるポテンシャルで溢れている町だと感じました。

視察後、実際に進出するまでにどのような準備をされましたか?

左:芳村様 右:みらい株式会社 地域コーディネーター・大矢
芳村様に、当社拠点がある天草市まで足を延ばしていただいた際の一コマ

地方創生事業は弊社にとって初めての挑戦なので、人間関係の構築には特に時間をかけて丁寧に取り組んできたつもりです。元々初対面の人と仲良くなるのがあまり得意ではないので、地元の方々とうまく信頼関係を築けるかという面に関しては懸念があったのですが、みらいさんの視察ツアーをきっかけに、現在では行政や観光協会、区民会の方々など、人脈もかなり広がりました。視察ツアーの際に地元の方々と丁寧に繋げていただいたおかげで、無事に西郷恵一郎邸の継承もでき、今に至るので、本当にありがたい限りです。これからさらに地域に溶け込んで活動していきたいと思います。

地域の名産を使ったオリジナル商品の開発も 

一面に茶畑が広がる南九州市は、「知覧茶」のブランドで知られるお茶の生産量で日本一

実際に進出されてみて、良かったと思うことは何ですか?

良かったのは、とにかく南九州市の人々と風土が大好きになったことです。歴史に名を残す偉人たちを数多く生んだこの地で桜島を眺めると、不思議とパワーが湧いてくるんです。今も毎月のように足を運び、市内を動き回っています。

進出してからの1年間では、どのような進展がありましたか?

弊社オリジナルの知覧抹茶、大和園「雅の翠香」を開発しました。弊社が継承させていただいた西郷恵一郎邸は、地元の観光ボランティアの方々に運営していただいているのですが、皆さんとの企画会議の中で、知覧抹茶を存分に打ち出すことを決めたことが背景です。南九州市には近頃クルーズ船が寄港するようになり、外国人観光客の方々も多くいらっしゃっていて、彼らにも抹茶を楽しんでいただいています。「抹茶」という商品は、既にものすごいブランド力があることを実感しました。抹茶というと、他の地域のものが有名ですが、知覧抹茶も負けず劣らず高品質なので、これからさらに普及させていきたいと思います。

NHホテルマネジメント社オリジナルの知覧抹茶 大和園「雅の翠香」

さらなる地域貢献のため拠点拡大を目指す

最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか?

まずは、西郷恵一郎邸で提供する体験を充実させていきたいと思います。国内外からいらっしゃるお客様に、ぜひお庭を見ながら、知覧抹茶を楽しんでいただきたいです。また、薩摩の文化や歴史にも触れていただけるよう、観光ボランティアの皆さんとも引き続き連携して取り組んで参ります。西郷恵一郎邸で基盤を作ることができたら、今後はさらに拠点を増やして、飲食店や道の駅のような事業も展開できればと考えています。そこでは地元の農家の方々が丹精込めて育てた野菜を使ったり売ったりして、雇用やお金の流れを生み出せればと思っています。
まだまだ野望はたくさんあります。これから南九州市の皆さんと共に、一つ一つ形にしていくのが楽しみでなりません。