
地方への企業誘致が活発化するなか、「補助金が出るなら…」と地域進出を検討する企業が増えています。しかし、「補助金ありき」で事業計画を立ててしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性も。補助金は確かに魅力的な制度ですが、申請や運用には独自のハードルがあります。
そこで、今回の記事では、補助金の仕組みを正しく理解し、補助金に頼りすぎない地域進出を実現するためのポイントをご紹介します。
地方拠点の設置を本気で考える企業の皆さまへ、後悔のない進出を実現するヒントになれば嬉しいです。
補助金の正しい理解が、地方進出の成否を分ける

「補助金が出るからお得」という考え方は、必ずしも正解ではありません。まずは、補助金の仕組みや注意点をしっかりと把握することが、地方での事業展開を成功に導く第一歩です。改めて、補助金とは何かみてみましょう。
補助金と助成金の違いとは?
「補助金」と「助成金」は、どちらも国や自治体などの公的機関から交付される資金援助ですが、その性質や受け取り方には明確な違いがあります。まず、助成金は「条件を満たせば基本的に支給される」タイプの支援です。たとえば、雇用環境の改善や人材育成に関する助成金は、申請企業が要件を満たしていれば、原則として不採択になることはほとんどありません。いわば“申請型”であり、確実性の高い資金調達手段です。
一方で、補助金は、公募期間が定められ、その枠のなかで事業計画の内容や波及効果、実現可能性などが審査され、優れた計画と判断された企業のみが採択されます。つまり「出したら必ずもらえる」というものではなく、採択率は事業や年度によって大きく変動します。人気のある補助金では、採択率が3割を下回ることもあるそうです。
つまり、補助金を使う場合は一時的に全額を自己負担し、後から一部が戻ってくるという資金繰りになるため、特に中小企業にとっては、この“先に払う”という特性が大きなハードルとなります。
この2つの違いを正しく理解しておかないと、「もらえると思っていたのに採択されなかった」「採択されたのに資金繰りが苦しい」という事態に陥りかねません。自己資金が潤沢でない企業にとってはキャッシュフローに大きな影響が生じ、進出後に資金が回らず撤退を余儀なくされるケースも見受けられます。
地方進出の計画を立てる際には、両者の違いを前提にした資金戦略を練ることが欠かせないのです。
補助率と上限金額を見落とさない
補助金は対象経費の全額が返ってくるわけではありません。たとえば、補助率が3分の2であれば、残りの3分の1は自己負担です。さらに、補助額には上限が設けられており、上限を超える費用は全額自己負担になります。初期投資の大きな場合は、この差額が数百万円以上にのぼることもあります。
補助金を前提とした資金計画は、想定外の自己負担により頓挫するリスクをはらんでいるのです。
「補助金ありき」にしないために、今できる準備とは

補助金はあくまでも「後押しするための支援策」です。補助金を前提にせずとも、継続的に運営できる事業体制を整えておくことが、地方での長期的な成功につながります。
書類・報告・審査…想像以上に手間がかかる補助金申請
補助金の申請には、事業計画書、収支予測、財務諸表、見積書など多くの書類を準備する必要があります。採択された後も、定期的な進捗報告や成果報告が求められ、事務作業の負担が予想以上に重くなることも。
さらに、補助対象外の支出を誤って含めてしまうと返還を求められる可能性があるため、制度の理解と正確な運用が不可欠です。これらの対応に手が回らず、本来の事業活動に集中できなくなるケースもあります。
申請が難しい場合は、中小企業診断士や行政書士など専門家に相談することがオススメです。また、申請先の担当者に尋ねると丁寧に教えてくれますので、わからないことは遠慮なく質問しましょう。
キャッシュフローを確保できるかが勝負の分かれ目
補助金の支給は原則として「後払い」です。つまり、資金繰りを綿密に設計しなければ、採択されたとしても事業開始前に資金ショートを起こす可能性があります。特に中小企業の場合、複数の補助金申請を同時進行することで資金繰りがさらに複雑になるリスクも。
万が一、補助金の入金が遅延した場合でも事業が止まらないよう、資金の「余白」を持たせておくことが重要です。
地域とのつながりが、事業の“呼吸”をつくる
補助金が終了したあとも継続して事業を続けられるかどうか—。その鍵は、地域に根差した事業運営にあります。地域課題の解決とリンクしたビジネスモデルは、ストーリー性があり、共感を得られやすいことから、結果として企業の社会的信用や人材確保にもつながる好循環を生み出す可能性が高いです。
現地で信頼できるパートナー企業や自治体、NPO、商工団体などと関係性を築いておくことは、長期的な事業の安定につながります。
まとめ
補助金は、地方進出のハードルを下げる重要な制度です。しかし、過度な依存は逆に企業の自由度や持続可能性を奪ってしまいます。補助金ありきではなく、「補助金がなくてもやっていける」土台を先に築くこと。そのうえで補助金を“加速装置”として活用することが、本質的な企業誘致の成功につながります。
弊社では、補助金の選定から、キャッシュフロー設計、地域連携先の紹介まで、地方拠点設置にまつわる多面的な支援を行っています。「本気で地方進出を考えたい」「成功する拠点運営を実現したい」そんな企業様は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの挑戦を、地域とともに伴走します。
地方での拠点設置をご検討の企業さま、ぜひお気軽にご相談ください。