人口7万人の島から70万人都市へ 〜天草発モデルで都市部の課題と向き合った実証の記録〜

日本の端から日本を元気に(通称:日日)の地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
今回は、天草発のテレワーク推進モデルが、国の実証事業を通じて都市部で試され、日日が掲げるビジョンの実現に向けて一歩前進した転機について伺います。

早速インタビューしてみましょう。

このコラムでも語られている、テレワークプラットフォームについて教えてください。

はい、私が天草へと拠点を移した大きな理由の一つでもあるのですが、テレワークを普及させることで、地方に雇用を創出し、地域の人口減少を緩やかにしたいということはよく話していますが、そうした取り組みを通じて、全国の地方自治体の希望となるモデルをつくりたいと考えています。
実は3年ほど前に、そうした思いが現実に動き出した出来事がありました。

どんな内容ですか?

2023年夏のことです。日日の前身企業である「みらい株式会社」として、総務省の実証事業に企画が採択されました。天草市で生まれたテレワークプラットフォーム「ファロールオンライン」を元にした取り組みを、人口70万人以上の地方都市・熊本市をフィールドに実証できることになったんです。

天草市で生まれた仕組みがモデルになったのですね?

そうなんです。「テレワークを活用した地域課題解決事例の創出に関する実証事業」  という名称の通りの事業だったんですが、これがまさに、私たちが2021年から天草市を拠点に積み重ねてきた取り組みとぴったり重なる内容だったんです。
天草で育ててきたモデルを次の段階へと進める上で、絶好の機会をいただけたと感じました。

なぜ熊本市で実証事業を行うことになったのでしょうか。

熊本市のご担当者の方が、以前から「ファロールオンライン」のようなテレワークプラットフォームの仕組みに関心を寄せていらっしゃり、天草市に視察に来られたこともありました。「いつか熊本市でも同様の事業を」という構想があった中で、ちょうど実証事業の公募があったので、意向が一致した熊本市とともに応募することになったんです。

実証内容について教えてください。

基本的には、天草市で行っているテレワークプラットフォームの仕組みをベースにし、様々な事情があって働きたくても働けない市民の方たちをテレワーカーとして育成し、就業機会の創出につなげようとするものでした。
一方で、熊本市は地方都市の中でも人口の多いところですから、都市部ならではの地域課題に合わせて事業モデルをカスタマイズしたというのが、天草とは異なるところでしたね。

カスタマイズしたこととは?

天草市では、テレワークプラットフォームに登録するテレワーカーの多くが育児・介護従事者だったのですが、外資大手の半導体関連企業の進出もあり、企業の人手不足が深刻な熊本市では、より多様な人材の活躍推進が課題となっていました。
そこで、各分野に精通する熊本市内の専門機関とともにコンソーシアムを組み、外国人、高齢者、障がい者の方々などもターゲットとしたプラットフォームをつくって実証を行ったんです。

実証事業を行ってみて、どのような反応がありましたか?

160名ほどの熊本市民の方々がテレワークセミナーに参加され、テレワークプラットフォームのメンバーも半年足らずで70名程増えました。
天草市に比べて、熊本市には企業が多く、大きな求人市場もあります。それでも、これだけ多くの人がテレワークという働き方に関心を持っているということは驚きでした。

テレワークという柔軟な働き方がもつ可能性を目の当たりにされたのですね。

そうですね。人口7万人の天草で構築したテレワークプラットフォームのモデルが、人口が10倍以上もある都市部においても地域課題解決につながることが見えてきました。
日本の端にある天草で始まった取り組みが、地域を越えて、より多くの人の働き方の選択肢を広げていく。
熊本市での実証を通じて、地域の規模や環境にかかわらず、この仕組みを活かせる可能性を感じました。

大矢さんはこれ以降、さらに全国を飛び回っていますね。

実証事業をきっかけに得られたご縁によって、天草からはじまった取り組みについて全国に向けて伝える機会を、それまで以上にたくさんいただくようになりました。「ファロールオンライン」が雑誌に紹介されたり、テレワーク関連のセミナーへ登壇したり、「日本の端から日本を元気に」というビジョンを体現できる場が増えました。
さらにありがたいことに、2025年度には総務省の地域力創造アドバイザーに就任し、より多くの自治体のお役に立てる環境が整ってきました。

実証事業への参加をきっかけに、大矢さんの構想の実現に向けても大きな前進があったのですね。

はい。「小さな町だから何もできない」ということは決してなく、「小さな町だからこそ実現できること」があると思っています。実証事業では、人口7万人の天草で生まれたモデルが、人口70万人の熊本市にも適用できることがわかったんです。
同じように、日本の端から全国の自治体の希望になるような事例をつくっていくということを、今後も身をもって行っていきたいと感じさせてくれた出来事でした。

お話ありがとうございます。
天草で生まれたモデルが、これから全国各地へと広がっていくのが楽しみですね!

総務省の実証事業は、天草で育ててきた取り組みが次の地域へとつながり始める大きなきっかけであったといえます。その転機を振り返りながら、「日本の端から日本を元気に」というビジョン実現に向けた歩みが、今も続いていることを実感するインタビューとなりました。
次回は、こうした取り組みの広がりの中、原点である天草を舞台に続けている様々な試みについて語っていただきます。お楽しみに!

▼関連リンク
「テレワークを活用した地域課題解決事例の創出に関する実証事業」成果報告会の動画はこちら