初めての自治体仕事と小諸のひなちゃん
みらいの地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
今回は、大矢が初めて自治体と仕事をした時のエピソードについてお聞きします。
ある職員の方から、地域で活動する際に一番大事な姿勢を学んだそうですが、どのような出会いだったのでしょうか?
長野県小諸市です。軽井沢の近くで、浅間山の南斜面に広がる高原都市です。市内中央に千曲川が流れる自然豊かなところです。
2020年の夏、新型コロナウイルス感染症の影響で経済状況が悪化し始めていた頃ですね。地方では、もともと人口減少による様々な課題がある中でパンデミックが起こり、「何か手を打たなければ」という危機感が高まっていた時期だったと思います。
一方で、ライフスタイルにも変化があって、首都圏を中心に地方移住への関心が高まり始めた頃でもありました。
小諸市の人口拡大に向けた調査と戦略立案に携わることになりました。
「まちのどのような魅力を発信したら人を呼び込めるのか」といったことを探るプロジェクトですね。移住体験ツアーを企画することになったのですが、まちを知らないとなにも始まらないので、最初に市役所の職員さんと一緒に、市内の色々な所を回りました。
そうです。ひなちゃんの愛称で、地域の方々にとても親しまれている若い職員さんだったのですが、市内の魅力的なところをたくさん案内してくれました。
有名どころで言うと、小諸城ですね。城郭が城下町よりも低い位置にあることから「穴城」と呼ばれていて、桜の名所でもあるお城です。加賀藩前田家が江戸に向かう際に通ったという北国街道沿いも案内してもらいました。街道沿いで行われる町おこしプロジェクトなんかも含め、「東京の人達にこんなところを案内したら面白いと思いますよ」とひなちゃんから教えてもらい、移住体験ツアーの企画を一緒に詰めていきました。
そんな中で一番印象的だったのが、トマト農家さんでの出来事です。
移住体験ツアーで、トマトの収穫体験をさせてもらえることになりました。
みんなでトマトを収穫して、採れたてのトマトでサンドッチを作って畑で食べるという企画を実行できることになったんです。振り返ると、トマト農家さんにツアー開催を受け入れもらえるというのは、すごいことだったなと思うんです。ひなちゃんがいたからこそ、実現できたんだなって。
当時、コロナ禍真っ只中だったんですよね。
トマト農家さんのお話によると、ツアー参加者の中からコロナ患者が出たら、収穫したトマトだけでなく、農園全部が出荷停止になってしまう恐れがあるとのことでした。それを聞いて、リスクを承知の上で、今回のツアーの受け入れをしてくださったことに、頭が下がる思いでした。
トマト農家さんに「どうして、そこまでして、今回のツアーを引き受けてくださるんですか」ってお伺いしたんです。そしたら笑いながら、「いや、もうひなちゃんに頼まれると、断れないんだよ」っておっしゃっていたんです。
ひなちゃんの人望が農家さんを突き動かしたんですね。
小諸城をひなちゃんと一緒に歩いていたときも、その公園内を整備している植木屋さんが手を止めて、すっと立ち上がって、「おお、ひなちゃん!!」って声をかけるんですよ。すごく愛されているなと感じましたね。
どうして、ひなちゃんはそんなにも地域の方から愛されているんだと思いますか?
とにかく地域のためになることは、断らずに、やってみる、そんな姿勢が地域の方の心に響いているんじゃないでしょうか。例えば、消防団に入っていたり、地元の部活動のマネージャーをしていたりね。呼ばれると土日でも飛んでいくんですよ。ひなちゃん自身も、いくつの地域団体に所属しているのか分からないと言っていました。地元の方々も、ひなちゃんが日頃から地域のために汗水垂らして行動している姿を知っているんですよね。だからこそ、「ひなちゃんの頼みなら・・・」と受け入れてもらえるんだと思いました。
ひなちゃんだからこそ、地域の方が協力をしてくれるんですね。
そうですね。ひなちゃんと行動を共にして、まちづくりの基礎は、地域に愛されることなんだと学びました。自分がその地域で何か事業をしたいと思った時、これは地域のためになるはずだと、どんなに絵を描いたとしても、地域の方との関係性がないうちは前に進まないんですよね。なぜなら地域を作っているのはそこに住んでいる方たちだから。そんなことを、ひなちゃんに教えてもらいました。
ひなちゃんからの学びが、大矢さんの活動姿勢の根底にあるということですか?
ありますね。地域を活性化するためには「まず自分が動く」というのを指針に活動していますが、これはひなちゃんの姿から確実に影響を受けています。協力者は待っていても現れなくて、まずは自分が一生懸命取り組むことで、自ずと道が開けていくのだと思っています。
間違いないです。自治体にはこんなに素晴らしい方がいるんだなって感動しました。初めての自治体仕事をひなちゃんとできたことは、私にとってすごく大きな経験でしたね。
素晴らしい出会いだったのですね、ありがとうございます。
今回は、大矢の地域コーディネーターとしての活動姿勢に大きく影響を与えた、ひなちゃんとの出会いについて語っていただきました。
次回もまた、現在の地方創生事業を形づくる大切な気づき、そして出会いについてお話いただきます。
お楽しみに!
すべては岩国からはじまった~地方創生への道~
みらいの地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
今回は、大矢が地方に目を向けるきっかけとなった、山口県岩国市での運命的な出会いについて、お聞きします。
2020年2月、コロナ禍で緊急事態宣言が発令される2か月前ですね。当時は別の会社に勤めていて、テレワークを推進する事業に携わっていました。会社に岩国市視察ツアーの案内が届いたことをきっかけに、ツアー参加者として現地に行きました。
視察ツアーとは、どのようなツアーだったのでしょう?
都内の企業が複数社招かれていて、1日目は自治体各課とのミーティングと懇親会、2日目は市内観光が予定に組まれていました。ミーティングでは、各課による取り組み発表があり、参加企業と意見交換をする機会が設けられていました。
この企画のテーマとしては「人口減少対策」があり、都市部の企業の視点で岩国の良いところ、悪いところを発見し、今後の事業に活かしていきたいといった内容でした。ちなみに人口減少率でいうと、全国平均は年間約0.5%なのに対し、当時の岩国市は年間1.0%を少し超えたぐらいでしたね。
自治体各課と民間企業による意見交換とは、画期的ですね。
岩国市には米軍基地があることもあって、その予算を活用して、子育て支援や公園・病院などの設備もすごく充実しているんですよね。一見しただけでは、人口減少によって産業が衰退したり、活力が失われていったりする感覚を持てないかもしれません。外からの意見を聞くことで、そこに目を向けようという意図があったように感じました。私にとっては初めて接した自治体事業でしたが、職員の方々の地域に対する熱心な姿勢に触れることで、これまで考えもしなかった課題意識を持つことができました。
そのような背景があったのですね。そもそも、なぜテレワークを推進する会社が人口減少についての意見交換の場に招待されたのですか?
人口の流出を緩やかにするためには雇用創出が不可欠です。地域に雇用を生む取り組みとして、企業誘致と並んで注目されるのが、地元で働くことを可能にするテレワークの普及なんですよね。それで、テレワークの専門家としてご招待いただいたんです。
なるほど、そうでしたか。ミーティングで発表された、岩国市各課の取り組みについては、どのように感じましたか?
職員の皆さんが、岩国のことを想っていらっしゃることがすごく伝わってきました。自治体と企業という異なる立場の参加者が意見を交わすことで、双方にとって新しい気づきがあったのではと思います。
ツアー2日目には、世界遺産を目指している日本三名橋のひとつ「錦帯橋」など、岩国の色々なところを見て回りました。有名な「獺祭」の酒蔵へもお伺いし、責任者の方と意見交換をさせていただきました。新幹線も空港もあって、有名な観光スポットや豊かな自然もあるし、公共施設は充実をしているし、岩国は本当に素晴らしいところだなと思いました。逆に言うと、こんなに恵まれた地域ですら悩んでいるんだと考えさせられましたね。
帰りの新幹線の中で「岩国がこれだけ悩んでいるんだったら、他の地方はもっと悩んでいるのでは?」「もしかしたら、テレワークを世の中に広めることで、もっと多くの地方のお役に立てるのでは?」と思いました。
岩国視察が地方創生事業立ち上げの背景にあるのですね。
はい!特に視察ツアーでの市職員の方々との出会いが大きかったですね。令和4年度からは岩国市への企業誘致を受託事業者としてご支援させていただくようになり、結果として複数のIT企業を誘致することができました。きっかけを与えてくれた岩国市に少しだけ恩返しができたかな・・・というのが今の心境です。
公民連携でまちづくりを推進している素晴らしい事例ですね。
進出企業さんがまちに馴染んでいくことも、テレワークが普及して子育てママさんが働けるようになることも、自治体と民間企業が気持ちをひとつにすることで、すごく促進されるんですよね。初めて自治体と接する機会となった岩国市でそのことを経験できたことは、私にとって本当にラッキーなことだったと思っています。
お互いに心がひとつになっているからこそ推進できる、まちづくりですね。
今回は、大矢が地方創生事業に一歩踏み出すきっかけとなった、岩国市でのエピソードについてお話いただきました。
次回は、そんな大矢が、初めて地方自治体と仕事をした時の話をお聞きします。
お楽しみに!
日本の端から日本を元気に!みらいの地方創生とその起源とは?
みらいの地域コーディネーター大矢に、地方創生について「広く熱く」語っていただく当コーナー。
第1回目は、みらいの地方創生事業と、事業のベースにある原体験についてインタビューします。
みらいの地方創生事業ではどのような取り組みをしていますか?
企業誘致とテレワーク普及の2軸で、地方に雇用を創出して、人口減少を緩やかにしていく取り組みをしています。
「日本の端から日本を元気に!」をモットーに、熊本県天草市から事業をスタートさせました。
企業誘致による雇用創出は、どのように人口減少を緩やかにするのでしょうか?
例えば、ゲームが大好きでゲームを作る仕事がしたいと思った時に、天草にはその仕事がないので、東京や福岡に出ていかないといけないですよね。でも、東京のゲーム制作会社が天草にオフィスを出してくれたら、ここから離れずに好きな仕事ができます。就職のタイミングで人が離れてしまうのをくい止めたり、Uターンの促進にもつながります。
やりたい仕事がないというのが1番大きいですが、待遇的な理由もあります。同じ仕事をしていても、都市部と比べると地方では給与水準が低いので。東京の企業が天草に進出をし、東京と同じレンジの待遇を用意してくださると、天草の新卒者にとって魅力的な就職先になりますよね。
そうですね。特に子育て世代では、「都市部へ出ないと高等教育機関がないので、進学させること自体が大きな負担」になったり、「子どもに十分な教育や情報が届かないことで、将来が暗くなってしまうんじゃないか?」といった漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃいます。子育て世代が天草で安心して生活をしていくためには、都市部と変わらない就職や教育の選択肢、またそれらと触れる機会を増やすことが重要だと考えています。
そうすると世帯所得など経済的な部分も影響しそうですね?
はい。実は雇用創出のもう一本の軸として、子育てや介護などで時間に制約があったり、外で働くことができない方々を対象として、テレワークを広める活動をしています。結果として、世帯所得が増え、経済的な理由で引っ越しをすることなく、安心して暮らすことができたら、人口減少も緩やかになりますよね。
なるほど。テレワークの普及活動では、具体的にどのようなことをしているのですか?
テレワーク入門セミナーやスキルアップ講座の開催をしています。また、学んだスキルをいかして稼ぐことができるテレワークプラットフォーム「ファロールオンライン」の運営を通じて、働く場を提供しています。
「ファロールオンライン」の発想はどこからきているのでしょうか?
実は、個別指導塾のフランチャイズ本部で勤務していた時の経験からきています。本部として色々な仕事があるんですが、そのひとつが講師の採用でした。
講師の採用をされていたのですね。それがどのように事業の発想につながったのでしょうか?
個別指導塾って、講師のほとんどが大学生か主婦の方々なんですよ。すごい学歴や職歴を持ちながら、それを表に出すこともなく熱心に指導されている方がたくさんいて。人口減少や労働力不足といったニュースが報道される中で、こういった優秀な方達の能力を生かせる場がもっとあるのではないかと思ったんです。
なるほど。人材と仕事がうまくつながっていないと感じたのですね。
そうですね。そんな折に、オンラインアシスタントというサービスを初めて知りました。優秀な主婦の方々をオンライン上で集めて、都市部の企業様から業務のアウトソーシングを受けるというビジネスモデルですね。まさに私が考えていたことと合致し、縁あって業界に入りました。そこで「ファロールオンライン」の原型ができていったんです。
その頃から地方を拠点に事業展開したいと考えていたのですか?
いえ、その時はまったく考えていませんでした。私が地方に目を向けるようになったのは、ある自治体から届いた一通のメールがきっかけだったんです。
はい、山口県の岩国市というところなんですが。
長くなってしまったので、次回詳しくお話しますね。
今回は、みらいの地方創生事業について、原点に遡ってお話いただきました。
次回は、大矢がそもそも地方に関心を持つきっかけとなった、山口県岩国市での運命的な出会いについてお聞きする予定です。
お楽しみに!